コミュニケーションを大切に、信頼関係を築いていきたい
JR・京成・都営・都バスと多数の乗り入れがあり、交通の要所としてにぎわう街・日暮里。
古くからの商店や住宅街といった下町らしさが残る一方で、新しいマンションも続々と建設され、若い世代にも注目を浴びているエリアです。
「サークル歯科クリニック日暮里」は、日暮里駅前のバスロータリー脇のあやめ通りを入ってすぐ。1階にドラッグストアが入っているビルの3階にあります。理事長を務めておられる藤本智也先生に、お話をうかがいました。
(2020年9月7日取材)
日暮里の印象はいかがですか。
これまでずっと東京駅のビジネス街で働いていたので、同じ山手線沿いとはいえ、日暮里には下町の温かい雰囲気がありますね。住宅街でもあるので、待合室でご近所さん同士がおしゃべりされていたり、人と人とのつながりが残っている感じがします。私自身が日暮里のことをまだあまり知らないので、反対に患者さまにいろいろ教わっている感じです(笑)。
患者さまやスタッフさんは「朝日出歯科医院」から引き継がれたということですが、スムーズに引き継がれるように、工夫された点はありますか。
医院継承にあたり、朝日出歯科医院で今年の1月から一緒に働かせてもらっていたので、連携はとりやすかったですね。前院長先生がスタッフや患者さまに説明しておいてくれましたので、スムーズに引き継ぐことができました。前院長先生が長年かけて培ってこられた信頼をもとに、今後も変わらず頼れる、身近な歯科医院でありたいと思っています。
スタッフさんは以前から同じ方なので、患者さまも安心できますよね。
そうですね。長いスタッフだと働いて20年になるので、患者さまを赤ちゃんの時から知っていることもあります。以前から来られている患者さまはご年配の方が多いのですが、治療に来ているのか、雑談しに来ているのかわからない感じで、待合室はいつも和やかですよ(笑)。新しく来られる方はホームページを見て来られることもあり、20〜30代の方が多いですね。おかげさまで、近隣の方にも少しずつ認知されてきたのかなと思います。
先生から見て、スタッフさんはどんな感じでしょう。
一人一人 いい意味で個性があって、各々が得意分野を伸ばすために努力していて、有資格者も多いので心強いですね。患者さまに対しても、優しく対応できる人ばかりで安心しています。やはりスタッフが仲良く明るい雰囲気じゃないと、患者さまも不安になってしまうと思いますので、これからもみんなで和気あいあいとやっていきたいですね。
コロナ禍が続いていますが、感染対策以外で何か工夫されていることはありますか。
院内の感染対策はかなり強化していますが、院内だけの対策では限りがあると思っています。そこで患者さまにも、マスクの正しい着け方や外し方、手の正しい洗い方、ものの触れ方など、「今日から家でもできるコロナ対策」をお伝えするようにしています。すぐに使える情報ということで、喜んでいただけていますね。
開院してわずか数カ月ですが、クチコミの評判がとてもいいですよね。
ありがとうございます。とにかくコミュニケーションを大事にしたいので、患者さまとはたくさん話して、「まずは人と人としての信頼関係をしっかり作る」ということに重きをおいています。
腫れや痛みが強い急患の方にはもちろん迅速に対応しますが、基本的に治療を決める際には、その場で結論を出すことは極力控えてもらってるんですね。むしろ、「ご自宅でじっくり検討してから決めてくださいね」とお願いしていますので、クチコミでもそうした部分を評価していただけたのかなと思います。
その場限りの治療ではなく、何十年先を見据えた治療も含めて、提案されているんですね。
そうですね。最近は“治療の透明性”を求めている方が多いので、治療の良い面も良くない面も正直に伝えて、そのうえで選んでもらったほうが納得できて、長い目で見た時に「信頼」に結びつくと思うんです。
その手がかりになるように、料金比較表や、今後の治療の流れ、デメリットなどもまとめた「デンタルファイル」という手作りの資料をお渡ししています。
その場限りの治療ではなく、何十年先を見据えた治療も含めて、提案されているんですね。
今は情報が多い世の中で何でもスマホで調べられますが、伝言ゲームのように「正しくない情報」も拡散されています。それよりは、歯科医師自らが手作りした視覚的な資料を直接お渡しすることで、ご家族とじっくり検討したり、歯のことに興味を持っていただけるきっかけになればいいなと思ったんです。 とにかく、「信頼できる情報を、ご家族にも伝えてもらいたい」という想いで、開業準備中にコツコツと、治療ごとに60〜70種類作りました。
それはすごいですね。そうした地道な取り組みが、「本当に信頼できる情報」ということで、きちんと届いているんでしょうね。
実際、持ち帰った資料を家族の方にも見せてくれて、その家族の方も来てくださるケースも増えてきました。やはり、大切な方をご紹介いただけた時は本当にうれしく、歯科医師冥利に尽きますね。
以前セレックで有名な歯科医院に長く勤めていらした経験を活かして、最近では歯科医師向けにセミナーの講師もされているそうですね。
メーカーさんからお声がけいただいて、そういった活動もしています。
というのも、私が10年間お世話になっていた八重洲歯科診療所の院長は、日本で初めてセレックの学位を取り、現在も大学で研究を続けておられる第一人者の先生なんです。その先生のもと、長期の臨床研究から得られたエビデンスにも触れながら、最前線で貴重な経験を多く積むことができました。
世の中がデジタルや5Gの時代になり、セレックは今や当たり前になりつつありますが、人より早く専門的に携わることができたのは、大きな強みになったと感じています。
また、「オーダーメイド義歯」にも積極的に取り組んでおられますが、どういうものなのでしょうか。
「オーダーメイド義歯」は、40年以上のキャリアを持つ技工士さんとタッグを組んで、その場で一緒に、微調整しながら治療していきます。
どんなに良くできた入れ歯でも、口のまわりの筋肉とうまく連動しなければ使いこなせないので、義手や義足のようにリハビリもしながら、時間をかけて身体の一部にしていくんです。
なぜなら、5年10年で総入れ歯になる方は少ないんですね。もっともっと長期間のひずみが原因なので、半年ほどかけて、身体にストレスがかからないように進めていきます。日暮里はシニアの方も多いので、この入れ歯をご希望される方はやはり多いですね。
こちらの医院では、入れ歯もインプラントも、どちらにも対応できるのも強みですね。
インプラントについては、口腔外科の先生とチームを組んで、わざわざ大学病院に行かなくても同じ水準の治療が受けられる環境を整えています。 ただ、今は「人生100年時代」を迎え、基礎疾患等でインプラントの外科的な手術が難しい方が増えていくと思いますので、入れ歯の需要はなくならないのではないでしょうか。だからこそ当院ではインプラントだけでなく、入れ歯のクオリティにもこだわって提供していきたいと思います。たとえばブリッジならば、セレックを使えば最短で一日でできますので、すぐに処置ができますよ。
まさに「サークル歯科」という院名どおり、各分野のプロが専門分野を活かしてチーム全体で治療されているんですね。
そうですね。矯正歯科や口腔外科を、今から私が身に着けようとするとすると10年かかってしまいますが、専門家と助け合ってチームで治療することで、より高水準の治療をお届けすることができます。
とくに最近はコロナなどの感染リスクを恐れて、大学病院に行きたくない方も多いので、近くに一か所ですべて治療できる歯科医院があれば喜んでいただけるかと思っています。
先生の現在に至るまでのヒストリーを教えていただけますか。どんなお子さんだったんでしょう。
滋賀県出身の関西人で、祖父も父も歯科医師の家で育ちました。
小さいころから手先が器用で、彫刻だったり、画を描いたり・・・何かモノを作るのが好きでしたね。でも物静かではなく、関西人なので、ずーっとしゃべってる(笑)。とにかく作ることと、しゃべることが好き、という子どもでした。
歯科医師になられたきっかけは。
もの作りが好きだったので建築方面に進むことも考えたのですが、人と話すことも好きなので、人と交わりながら手先も活かせる仕事がいいなと。人との関係性を大切に、長くおつきあいしていきたいので、なるべく転勤がない仕事…と考えると、自然と歯科医師をめざす形になりました。
母親が東京出身なのでもともとなじみがあり、縁あって都内で働くようになった感じですね。
プライベートではどのように過ごされていることが多いのですか。
4歳の息子がいるので、子どもとの時間を大切にしています。活発な子に育ってもらいたいので、休みができると公園に行ってサッカーしたり、散歩したりして、子どもと一緒に身体を動かしていますね(笑)。
指導医の資格もお持ちですが、後進やスタッフさんへの教育など、どんな医院にしていきたいとお考えですか。
「学ぶ自由のある職場」として、人が成長できる組織にしていきたいですね。
まずは基礎があってこそ、専門的な分野を伸ばしていけると考えています。私自身も口腔外科や矯正歯科は専門の先生に教えてもらったり、休みの日も先輩や知人の歯科医院で教えてもらったりと、勉強は欠かせませんね。
チーム医療を実践していて、お互いに学び合える環境なので、組織としてもレベルアップをはかりやすいと思っています。
今回、診療時間の短縮等をさせていただきましたが、スタッフに対しても「より働きやすい環境」を整えていきたいと考えています。
では最後に、患者さまへメッセージをお願いします。
歯や口腔内を診るのは当然ですが、それ以上に「人を診る」ことを大切に考えています。お一人お一人のお悩みやご希望に寄り添い、向き合ってまいりますので、何でも気軽にご相談ください。
これからも皆さまがお食事や会話を楽しまれ、ご自分の歯をなるべく残せるように、歯科医療を通じて「幸せ」を創造するお手伝いをさせていただければ幸いです。
今日はお忙しいところ、本当にありがとうございました!
インタビューを終えて
とても穏やかで、ゆっくりと的確に、わかりやすくお話してくださった藤本先生。その様子に、前向きで謙虚、誰に対しても誠実なお人柄が伝わってきました。デジタル機器を駆使した最新の治療を得意とされるロジカルな一面と、人と人とのアナログなコミュニケーションを大切にされる情の厚さ。くわえて広い視野をお持ちで意識の高い努力家なので、どのお話も大変興味深いインタビューとなりました。